情報技術による社会変化、つまり「情報革命」は社会に指数関数的な変化をもたらしています。指数関数のグラフをイメージすれば、不連続に感じられる昨今の非線形な変化もまた、従来からずっとつながっているコンピュータ科学応用の進展に由来する一連の変化であることがわかります。

情報革命は企業から顧客へのパワーシフトをもたらし、テクノロジ企業による従来市場の破壊をもたらし、そしてひとの価値観を変えすべてのモノをサービスにしてきました。

このような時代に、企業は売り切りでは終わることはできず、顧客との継続的なつながりに基づく事業を行うことになります。情報技術の進化が「顧客とのつながり」の粘着性を弱くする中で、企業が「顧客とのつながり」を維持・強化するためには、企業は顧客を「成功」させつづけなければなりません。顧客の成功とはすなわち顧客の進歩です。企業が成長するための条件は、顧客を成功させつづけることであり、顧客を進歩させつづけることです。

デジタルの時代の経営について、一緒に考えていきましょう。

顧客成功経営

カスタマーサクセス指向のサービスマネジメント
Customer Success Oriented Service Management

要約

スマートフォンなどでインターネットと常時接続した人々が相互につながり、情報とそしてサービスやモノとも、常につながっている世界になった。市場では企業から顧客の側へとパワーシフトが起こっている。デジタル技術を用いて事業構造を組み立てた新興企業群が、競争のルールを変え伝統的な業界をディスラプトしている。シェアリングエコノミーやサブスクリプションなどの形をもって様々なビジネスのサービス化が顕在化している。

本稿は、売り切りで終わるのではなく、獲得した既存顧客から繰り返し収益を得るリカーリングビジネスを重視する成長企業を検討の対象とする。B2Cだけでなく、一定数の不特定な得意先企業を持つB2Bも対象とする。これらの企業において、顧客が抱えているジョブを企業が共に成し遂げていく価値共創型の経営、すなわち「カスタマーサクセス指向のサービスマネジメント」を、いかに捉えいかに実現するかをテーマとする。

そのためにまず、「顧客とのつながり」を考える際に用いる枠組みを先行研究に基づき検討し、経営者の環境認識に役立つ市場構造モデルと顧客体験モデルを新規に提案する。そしてさらに、小規模企業が「顧客とのつながり」の維持に活用しうるデジタル技術を具体化する。そのために、サービスマネジメントを支える顧客理解や顧客体験等のシステムの技術的な構想設計を行い、その実現性と効果の推定を行う。今後、示した市場構造モデルと顧客体験モデルに基づく経営支援とシステムの実装による実証が課題となる。

キーワード

サービスマネジメント、サービスドミナントロジック、価値共創、ジョブ理論、リカレントビジネス、サブスクリプション、カスタマーサクセス、顧客エンゲージメント、デジタルトランスフォーメーション、IoT\n\nService management, Service-dominant logic, Co-creating unique value with customers, Job theory, Recurrent revenue business model, Subscription, Customer success, Customer engagement, Digital transformation, Internet of things

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