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ガイガーカウンタで放射線量を定点観測するモニタリングポストを組み立てました。「放射線簡易モニタリングポストMark2」というキットです(22,000円)。内蔵のマイコンはmbed (NXP製LPC1768)。観測データをPachubeにアップロードします。

ちょっと前に、Arduinoで測った温度をクラウドサービスPachubeへアップロードする実験をしてみましたが、今回はその温度計がガイガーカウンタに、Arduinoがmbedに、それぞれ置き換わったような構成です。

mbedはステキなマイコン

“☆board Orange・mbed セット” (きばん本舗)

mbedというのはコンパイラ含む開発環境が全部クラウド側に用意されているとても今風なマイコンです。開発環境をインストールする必要はありません。必要なのはブラウザだけ。インターネットのどこかのデータセンターで動いているサーバに接続して、ソースコードの編集もコンパイルもリンクも全部できてしまいます。ビルド結果のバイナリはファイルとしてブラウザがダウンロードします。

さらにビルドしたバイナリをマイコンに書き込むためにも専用のライターやアプリケーションは必要ありません。mbedをコンピュータにUSBケーブルでつなぐとUSBストレージとして見えます。ビルドされダウンロードされたバイナリファイルをこのストレージへコピーするだけで、マイコンへのプログラムの書き込みが完了。mbedのボード上にあるリセットボタンを押せば、あなたのプログラムが動きはじめます。

自作したプログラムやライブラリをみんなと共有するコミュニティも、開発環境と統合されたクラウドサービスとして提供されています。誰かが既につくってくれた成果を見つけ出して使わせてもらえば、かなり難しいことも簡単に実現できる場合があります。

ArduinoもPICもステキなのですが参入障壁の低さに関してはいまのところmbedがオススメだと思います。何もインストールしなくてもいきなり開発をはじめられる手軽さに加えて、マイコンとしての機能や性能も比較的リッチです。そういう制約に行き当たってハマるリスクが少ないのもいいですね。


“超お手軽マイコンmbed入門: みんなで簡単ガジェット作り (マイコンと電子工作)” (勝 純一)

放射線簡易モニタリングポスト

ガイガーカウンタというのはガイガーミュラー管を使って放射線量を測る計測器のことですね。Wikipediaで「ガイガーカウンタ」を検索してみると、ガイガー=ミュラー計数管のページに転送されます。

ガイガー=ミュラー計数管(ガイガー=ミュラーけいすうかん、Geiger-Müller counter)は、1928年ドイツハンス・ガイガーヴァルター・ミュラーが開発したガイガー=ミュラー管(Geiger-Müller tube)を応用した放射線量計測器である。

ガイガー・カウンター(Geiger counter)あるいはGM計数管とも呼ばれる。

今回組み立てた「放射線簡易モニタリングポストMark2」というキットは東日本大震災の被災者でもある木幡(こわた)さんが開発したオープンソースのハードウェアです。開発者の木幡さんが直々に解説指導してくださるハンズオンセミナーで、放射能測定の基礎知識についても教わってきました。

このキットではSBM-20というGM管を使っています。測定できるのは0~9.999μSv/hのγ線です。GM管は大きいほど感度(解像度)が上がるそうです。GM管ではβ線とγ線が測定されます。このキットではβ線を遮断してγ線だけを測定するようにできています。政府など公表値もγ線のみ。市販の計測器にはβ線を遮断していないものもあり、β線も含めて測る計測値は高い値になってしまうので注意が必要なようです。

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モニタリングポストは部屋に常設して定点観測するものですね。ACアダプタと有線のEthernetでLANにつなぐようになっています。ただ、電源はPlayStation Potable用のACアダプタが流用できる仕様なのだそうで、PSP用のポータブル電源をつなげば外に持ち出せるとのことでした。仕様はDC5V (EIAJ#2コネクタ) で、消費電流は約200mA。16桁×2行のLCDがついていますのでLANにつながなくても測定値は読めます。ブザーやLEDで放射線通過の頻度もわかります。本体の重量は約260gです。

もし持ち運ぶのであれば、測定器はビニール袋などに入れて汚さないように注意する必要があるそうです。測定器自身に汚染物質が付着してしまうと何を測っているのかわからなくなってしまうからですね。もちろん袋は取り替えなければいけませんね。地域ごとに値はばらつくし、少し移動しただけでも変わるそうです。一般に水がたまる場所の線量は高いのですね(雨樋、側溝、排水溝、など)。

組み立てて動かしてみよう

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放射能測定の基礎知識のレクチャを聞き、木幡さん自身が東日本大震災直後に撮影した現地の写真も見せていただき、そしていよいよキットの組み立てです。たくさん穴の開いた基板にたくさんの部品を載せてたくさんのハンダづけを成功させなければいけません。私にはかなりチャレンジング。実際ハードな道のりでした。もしひとりで作ってたら恐らくめげてたかもしれない失敗を3つ。木幡先生が助けてくれてよかった!

  1. D4の位置を間違えてD3と並べてハンダづけしてしまった(先生がはずしてくれた)
  2. ICソケットのピンが抜けかけた(先生が押し込んでくれた)
  3. LCDディスプレイの側につけるはずのヘッダを基板側にハンダづけしてしまった(ディスプレイ小基板側にソケットをハンダづけ、4端子ほど先生がつけてくれた)

そうそう、フラックスの洗浄もいったい何をしたらいいのかまるでわかっていませんでしたが、最初から最後まで先生がしっかり洗ってくれました。

そんなカンジにいろいろとお手数をおかけしながらようやく完成。放射線源を真ん中に置いて、市販の測定器と比較してみることもできました。実際には校正するほどの誤差はない様子でしたが。

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この簡易校正のとき先生が出してくれた黄色いやつが放射線源。Cs-137とかRadioactive Materialとか書いてありますね。海外通販で買えるのだそうです。

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校正には信頼できる測定器が必要です。先生が使っていたのはHORIBAの環境放射線モニタのようでした。しっかりビニール袋に入れて持ち運んでました。


“HORIBA(ホリバ) 環境放射線モニタ PA-1000 RADI (ラディ)” (HORIBA)

そしてアトムとビットをつなぐ

ハンズオンセミナーを終え、家に帰ってからウェブのサービスたちとの連携を試しました。アトムとビットをつなぐ、リアルとバーチャルをつなぐ、フィジカルとサイバーをつなぐ、デバイスとウェブをつなぐ、これが醍醐味ですよね。

TwitterにツイートさせてみたりPachubeにつないだり、やっていることは前に室温センサーとArduinoで試したことと一緒です。今回はmbedに書き込んでもらったプログラムに最初からこれらの機能が実装されています。設定するだけで動きますからさらに簡単。Twitterの認証はSuperTweet.netを利用するように作られていました。PachubeにはμSv/hとcpm値のデータストリームがアップロードされています。Pachubeに溜まっているデータはグラフ画像でも見えます。いつも変動している様子が見てとれます。

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みんなのデータともつながってみる

環境放射線計測マップは草の根のみんながPachubeにアップロードしている放射線量のデータを地図上で一覧できるサービスです。各地の情報が線量に応じた色の四角でプロットされています。私の簡易モニタリングポストのデータも反映されています。それぞれ精度はまちまちでしょうし数値そのものは気にしない方がいいと思います。でもある領域の傾向を把握できたり、もし時間とともにに大きな変動があったらそれに気づける可能性はありそうですね。

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カテゴリー: DeviceWeb